
<先人から学ぶ!からだのことNo.2>下着×女性の尊厳
女性の皆さん、今、どんな下着をつけていますか?
初回の一行目から「変質者のような質問」で、すみません。
その前に、「アンタ誰よ!」と思われたと思うので、自己紹介をさせて頂きますと、第一回<先人から学ぶ!からだのこと No.1> モデルという生き方×女性の健康 に登場し、このコーナーの取材と執筆を担当させて頂きます、藤森香衣と申します。
仕事は、モデルをしつつ、乳がんの経験からNPO法人C-ribbonsの代表理事というのをしています。
なので、大丈夫です!不審者ではありません笑
ここでは、もっと大きな枠(女性の体と仕事、日々の生活)で、人生の先人(先輩たち)からメッセージを頂き、体のことをもっと考える“きっかけ”にして頂きたいと思っています。
今回のゲストは「ナオランジェリー」の栗原菜緒さん。下着と健康、女性の尊厳について、深くお話して頂きました。
女性の背中を押してくれる下着ナオランジェリー誕生
『起業家とギャンブラーは、紙一重』
ヨーロッパの下着のような美しい発色と、柔らかで繊細なレースが魅力の、ナオランジェリー。
日本製の素材を使い、縫製も日本の工場にこだわった、頑固なモノづくりをしています。
私もこの下着を愛用していますが、ナオランジェリーを一言で説明するとしたら「女性の背中を押してくれる下着」です。乳がんの手術をしてから、美しい下着から遠ざかっていた私が”ブラを選ぶ楽しみ“に戻れたのも、ナオランジェリーのお陰だったりします。
そんな素敵なブランドを一人で立ち上げた、デザイナーの栗原菜緒さんですが「起業というのはギャンブルのようなもので、特に私のような【最初に大金を払って在庫を抱える商売】は、一番リスクが高い。だから、他の人にオススメはしません」
と言います。
なぜかというと、数百万円を“前金で”工場に払わないと、下着は作れないのです。
当初は資金を貯めるため、昼の仕事に加え、夜もホステスの仕事をしてお金を作る日々。
そしてブランドを一度立ち上げたら、季節ごとに新作を作るため、いつも数百万円が飛んでいく…
「月末に支払えるかどうか、そればっかり考えているのに、また作る…の繰り返しですよ。それを一年中やってます。笑」…怖い。聞いているだけで胃が痛くなり、こちらが震えてきます。
『起業家とギャンブラーは、紙一重』
こんな川柳が浮かんでしまう私の前で、振り切れた話を笑顔でしてくれる菜緒さん。なぜ、これほどまで、下着に全てを捧げるのか…その原動力となる出来事は、幼少期にありました。
繊細なレースが魅力のナオランジェリー
(ナオランジェリー公式instagramより)
まだまだある男尊女卑
「下着を通じて『女性の尊厳』を伝えたい」
「あなたは、女の子なんだから」
女に生まれただけで、男性よりも下に扱われる。女の子であれば、子供の頃から“何らかの形”で少なからず人としての違和感を経験した事があるのではないでしょうか。
菜緒さんも、そうした違和感の中である日、生まれて初めてブラを着けた自分の姿に女性であることの喜びを感じ、ありのままの自分を認めることができたんだそうです。そしてそれは「女性としての誇り」を得られた瞬間でした。
「ありのままの自分で良いと知ったから」
ナオランジェリーが掲げるコンセプト「女性の尊厳を守る」は、菜緒さんのこの出来事から始まっています。
「誰もが、自分自身を大切だと思える世の中にしたい」
デザイナーに、このブレない核となる思いがあるからこそ、ナオランジェリーが多くの女性から支持される理由なんだと思います。
デザインも豊富。ファンが増え続けるナオランジェリー(ナオランジェリー公式instagramより)
――起業してから「男性経営者との違い」は感じましたか?
日本の社会は男性が作り、いろんなことを決めていますよね。その時点で、やはり女性は肉体的にも精神的にもハンデを抱えていると思います。
(すごく前ですが)投資をしている方から聞いたのは「女性の経営者には投資しない。女は正しい判断ができないから」と。
もちろん、こうした一部の男性の考えは、今では変わってきていると思いたいですが、若い時にこれを聞いて、「そんなの、こっちからお断りだよ!」と思い、俄然やる気になりました。
未だに言われるのは、ナオランジェリーには誰か後ろ盾になる“男”がいるのかと。笑
もしくは、私は「資産家の娘」なのかとも聞かれます。こんなに大変な思いをして働いているのに、世間はそう思うんですよね。
若いうちは性暴力に合いましたし、セクハラ、パワハラも経験しました。
男性の中に「女性は、男性と結婚したいから一緒にいるんでしょ?」という女性蔑視が見え隠れするたびに、闘志に火がつきますね。ランジェリーデザイナーだと言うと、男性が抱く勝手なイメージを持たれますがコンセプトの「女性の尊厳を守る」を私が言った途端に、明らかにドン引いている男性もいます。
ただ、相手が引いてても、お構いなしに尊厳について話します!
尊厳は、全ての人間が有するものですから。構わず伝えます!
常に挑戦し続ける菜緒さん。コロナ禍オンラインフィッティングも(ナオランジェリー公式instagramより)
ブランド急成長の裏側での「菜緒さん本人の体調と変化」
太っていたから気付かなかった!?子宮腺筋症で子宮が10cmも大きくなっていた
――29歳で起業をされて、本当に忙しかったと思いますが、当時の生活について教えて下さい。
私は体がとても丈夫だったので、多少の無理が効く方でした。
生理痛も、それほど重い方でもなく普通に過ごしていましたが、「おかしいな」と思ったのは32歳の頃。
生理のたびに生理痛がひどくなってきて、飲んでいた市販薬の量を増やさないと効かない感じになっていったんです。
ただ、ずっと夢を追いかけて走り続けている状態なので、多少の痛みでは止まれない。
そんな時、人気のテレビ番組「ガイアの夜明け」の密着取材のお話を頂きました。
「放送後はきっと忙しくなるだろうから、今のうちに診て貰おう」
…そう思って病院へ行ったところ、お医者さんから
「【子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)】で、子宮が10cmも大きくなっている」と告げられました。何かがおかしいとは思っていましたが、そんな状態になっているなんて想像もしていませんでした。
「こんなに子宮がおおきくなっていて気付かなかった?」と病院で聞かれましたが当時は太っていたので、そのせいでお腹も出ていると思っていたんです。ただ先生の「この病気は子供ができにくくなる可能性もあります」という言葉で、どれだけ大変な事なのかが、そこでやっと分かりました。
――今は太っていませんが、ダイエットをされたんですか?
はい。何をするにも健康が大事だと気づいて、健康的に痩せるように努力しました。いま思えば起業してからの数年間で、私はどんどん太っていったんです。昼間の仕事と夜の仕事を掛け持ちし、やらなきゃいけない事が多すぎて、自分の体を気に掛ける時間が全然無かった。太った理由には、ストレスもあったと思います。
もし、あの時に病院へ行かなかったら、大変な事になっていたので本当に行って良かったです。痩せ過ぎは良くないけれど、子宮が大きくなってしまっているのに気づけないほど太っているというのは、やっぱりダメですよね。健康のための適正体重ってあるんだなと、とても思います。
私は、自分の体力に自信があったのもありますが、体力と気力があっても体は女性です。
夢に向かって頑張ることと、自分の体を大事にすることは、別で考えてはいけない。夢を追いかけている女性の皆さんには、本当に知って欲しいですね。
国際協力NGOジェオセフによる「I LDAY.」プロジェクトとコラボも。自分らしい人生を自分で決める「I LDAY.な生き方」を広げる世界中の女性のための活動(ナオランジェリー公式instagramより)
――ご自身の生活の中で、健康のためにこだわっている物はありますか?
私は昔から、睡眠が一番大事だと思っています。
どんなに忙しくても、ちゃんと寝ることだけはしっかり守りました。だから、あんなに多忙な時期でも乗り切れたのかなと思います。
睡眠の時間を快適にするために、使うものにもこだわっています。
枕は、「イヴドローム」というフランスの会社のもの。そして、何より好きなのはパジャマ。
私が好きなのは、日本にほとんど入ってこないシルクの「ナイトドレス」です。ひらひらしたものが好きなので、好きな物を着て気持ちよく、良い気分で寝ます。
日本に一つしか入荷しなかった「コットンクラブ」のナイトドレスがこれ!
下着を自分で選ぶとは?
”運命の1枚”を探してみよう!
――このインタビューを読んで下着に興味を持った読者に下着選びのアドバイスをお願いします。
下着やブラジャーには、どんなイメージを持っていますか?多くの方が
- 選ぶのも面倒だしカップ付きブラジャーがラクでいい。
- とりあえずお胸や乳頭を隠せばいい。
- 汗もかくし、気にせず洗えるものでいいや。
- ブラジャーは違和感があって、なかなか合うものに出会えない。
などと、感じているのではないでしょうか?
しかし、快適でデザインも満足のいく”運命の1枚”に出会うと一日の気持ちがグッと上がり、自信ややる気まで湧き出てしまうという不思議な力がランジェリーには宿っています。また、下着を丁寧に扱うとき、自分をも丁寧に扱っているように感じることがあります。
ワイヤーが苦手な方は、ノンワイヤーの素敵なブラジャーを。ワイヤーが大丈夫な方は、お胸を適度に支えてくれる快適なブラジャーを。ナイトブラは、締め付けや血流を止めないものを。
サイズやパターンがあっていれば、違和感なく一日を過ごすことができますので、是非”スペシャルな1枚”を見つけてくださいね。
各地でポップアップショップも開催(ナオランジェリー公式instagramより)
みんなに伝えたいメッセージは“自分の心を一番、大事にしてほしい”
自分で自分を雑に扱っていると、相手も雑に扱ってくる
――若い女性の皆さんに伝えたいことを教えて下さい。
「自分の心を一番、大事にしてほしい」
若い時は「今、目の前にあって誤魔化せるもの」に飛びつきがちですよね。目の前にあるものを若い時はつい、選んでしまう。
でも、一時的な快楽や満足よりも大事なことがあると私は思うんです。
最近思うのは『自分で自分を雑に扱っていると、相手も雑に扱ってくる』ということ。SEXも恋愛も「寂しい」という、あなたの気持ちを埋めてくれるのは一瞬のことで、過ぎたら空しくなるだけ。自分の誇りを傷つけてはダメです。
自分のことを後回しにしていると、他の人からも後回しにされてる気がします。
自分を大事にして、日々を丁寧に生きた方が結果的に人に伝わるのか、大切にされるんですよね。
ただ、そうして過ごしていたとしても、価値観が違う人というのは必ずいるので「この人には伝わらないな」と思ったら、私は無理せず離れるようにしています。そうやって、女の子には、自分の心を守って欲しいです。
それから、出来れば女性も何でも良いから働いているのがいいかなと。パートナーの収入だけに頼ると、相手とのパワーバランスがうまくいかない場合があるかもしれず、将来をパートナーと健やかに過ごすためにも、働き続けるのは良いかなと感じます。
若い時に、お姉さんたちにこういう事をもっと教えて欲しかった。なんで教えてくれなかったんだろう?笑
ナオランジェリーの情報は公式HPやSNSで確認できます!(ナオランジェリー公式instagramより)
【まとめ】
菜緒さんが最後に言っていたように「お姉さんたち(先人)から、もっと若い人たちに教えて欲しい」というのを私たちも感じて始まったのが、この企画です。特に、キャリアを積んでいる女性が「どのような生活を送り、何に困ったか」など、体と仕事について話して貰う機会はなかなか無いので、若い女性の皆さんの参考になれば嬉しいです。
皆さん、不安があれば電話相談、そして自己判断せずに病院へ行ってくださいね。
プロフィール
栗原菜緒(くりはら なお)
「世界における日本の地位やイメージを上げたい」という思いから、学習院大学在学中から卒業後、外務省で非常勤として勤務。その後、民間シンクタンクを経てコンサルティング会社にて、事業をゼロから立ち上げる業務に携わる。退職後、ランジェリーデザインを学ぶためにミラノへ留学。帰国後、日本の職人技術にインスピレーションを得たランジェリーを考案し、2013年上海ファッションウィークで「NAO LINGERIE」を発表。ランジェリーを通じて日本文化を世界に届けることを目標に、見た目の美しさと機能性をあわせもつメイド・イン・ジャパンのランジェリーをつくり続けている。
テレビ東京「ガイアの夜明け」、関西テレビ「セブンルール」、雑誌「Forbes」などメディア出演多数。2021年にはYouTube番組「今なお考え中。」を立ち上げ、さまざまなゲストを招きながら、人間の尊厳に関する情報発信を続けている。
ナオランジェリーホームページ https://naolingerie.com/
ブログ https://ameblo.jp/eplga-nao/
■取材・文/藤森香衣
モデル活動、NPO法人 C-ribbonsを設立、代表理事を務める。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトで企画・取材・執筆を担当
■編集/大井美深
ティーペック株式会社の広報担当。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトの情報サイトを運用