<先人から学ぶ!からだのこと>高校生×子宮頸がん予防啓発

2022年02月03日

こんにちは。先人から学ぶ!シリーズのナビゲーター・藤森香衣です。 

「子宮頸がんの啓発活動について、実際の若い女の子たちはどう思っているんだろう?」

私は“昭和生まれ”なので、平成に生まれた人たちや、令和に青春を送る子たちの気持ちを知りたい…と、この企画の立ち上げから、ずっと思っていました。

そんな矢先、「母校(品川女子学院)の高校生たちが、子宮頸がんの啓発活動をしている…」と聞き、早速、インタビューに行きました。

代表の遠藤咲幸さん(品川女子学院 高等部3年)さんは大学受験が控えていたため、感染症対策を完璧にし、受験の邪魔にならない時期に、学校側に調整をして頂き、お話を伺いました。

 いつもは「先人=人生の先輩からお話を聞く」コーナーですが、今回は、当事者の女子の今の思いを聞く「番外編」として、お届けします。

品川女子学院CBL
子宮頸がん” をテーマとした活動Lumiereのきっかけ

――活動のきっかけを教えてください。

【身近な社会課題を取り上げ、解決策まで考案する】という校内の活動CBL(Challenge Based Learning)※で、「子宮頸がんの予防と早期発見のために」を私たちはテーマに選びました。

子宮頸がんを選んだ理由の一つは、「HPVワクチンを娘に受けさせるか悩む親が多いけれど、親が迷っているうちに無料の機会を逃してしまった子が多くいる」こと、もう一つは、同級生のお母さんが子宮頸がんに罹患したことでした。

がんは、自分たちには関係ない事だと思っていましたが、この二つの出来事によって、「自分たちにも関係があるんだ」と思いました。

団体名の「Lumiere」は、フランス語で「光」という意味です。光を多くの人へ届けたい、そして私たちが発信した情報を知った人の未来が光り輝くように…そんな思いを込めて付けました。

※品川女子学院CBL(Challenge Based Learning)
「社会で活躍できる女性の育成」をめざす品川女子学院『28project』(28 歳の自分を思い描き、それを実現するためには何が必要か、どう行動すべきかを模索し、理想とする未来に向かっていくプロジェクト)プログラムの一つであり高校2年生の家庭科の授業にて行われている課題解決型学習。4、5人の小グループで CBLに取り組む。教師からのテーマ指示は行わず、解決したいテーマ決めから、全て生徒が行い最終的には各クラスにてプレゼンテーションが行われ、クラス発表から選ばれる10グループは CBL学年代表としてプレゼンテーションを行う。

私たちが当事者なのに子宮頸がんについての情報を知らない人が多いのはおかしい…
大人から教わるのを待っているのではなく、“私たち”が自分たちで考える

――テーマが決まってからはどのように進めましたか?

このテーマを選んでから、同級生と子宮頸がんについて話をしてみたり、校内アンケートを取ったりしましたが、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)についても、子宮頸がんについても、圧倒的に“正しい情報が不足している”ということが分かりました。

ワクチン接種の世代でもあるので、ヒアリングをしていると、ワクチンについての話がたくさん挙がりますが、私たちの活動は、ワクチン接種を薦めたい訳ではなく、子宮頸がんについての知識と情報が、多くの人の中に不足している現状を変えたいと思っています。

そうした「知識と情報」の中にワクチンがあるため、ワクチンについてもお話しています。世代や立場により様々な意見があると思います。でも、「受ける、受けない」を自分で選ばないと、結果的に後悔するのは本人で、もし、子宮頸がんについての知識やワクチンについてのメリット、デメリットを何も知らないで、「気づいたら接種時期を過ぎていた」「頸がんになっていた…」という人は、自分で選択した人と比較して後悔に差があり過ぎるためです。

『大人から教わるのを待っているのではなく、“私たち”が自分たちの活動をしていく』と軸を決めて、情報発信しています。

本活動で外部のコンテストの全国大会出場も!

親も、先生も巻き込んで学べる!
『子宮頸がんカルタ』を開発

――具体的な取り組みを紹介していただけますか?

日本の子宮頸がんの検診率は約43%(2019年国民生活基礎調査)ですが、学校でのアンケートなどを見る限り、そもそも子宮頸がんについての知識がなかったり、正しい情報を得られていない人が多いため、まず課題として、HPVや子宮頸がんについて、更に正しい情報を知ってもらうことが必要だと思いました。

「全員が、平等に正しい知識を得るには?」と考えたところ、ツールを使い、学校の授業として実施するのが良いと考え、授業でのツールとして、私たちは『子宮頸がんカルタ』を開発しました。

これは、中高生に楽しく興味を持って学んで貰うためです。正しい知識のために、医師による医療監修も受けています。

さらに、このカルタを使う上での『授業キット』も作りました。これがあれば、どの先生でもクラスですぐに【カルタを使用した授業ができるようにするため】です。

また、授業が終わった後に渡せる『子宮頸がんなどに関するリーフレット』も作成しました。

これを学生が親に見せることで、子宮頸がんについて保護者に理解してもらえると思い制作しました。

ここまで出来ているので、今は、これらの商品化を手伝って頂ける企業や、スポンサーを募集しています。より多くの方に使って欲しいですし、今後の私たちの活動資金も必要だからです。

 

制作したカルタと授業キット(現在はリニューアル中)

 ――コロナ禍で活動に変化したことはありますか?

コロナ禍で活動する中、オンラインで他の学校の子たちとも繋がれたので、「団体への想いが一緒なら、全国どこにいる人でも参加して欲しい!」と思うようになりました。リアルな場での活動や実際に会うことは難しくなりましたが、その分、枠を越えた出会いがありました。SNSで情報配信やコミュニケーションも活性化しました。

同世代から「私でできることあれば手伝うよ」など共感の声もあってうれしいです。

東京だけの意見では偏ってしまいますし、今やっている活動も、地方ではフィットしない部分も多いと思います。いろんな場所に住む子たちの意見を加えた方が、より良い情報になりますし、団体としても大きくなれるんじゃないかなと、SNSやオンライン上での活動強化を前向きに考えています。

――今後の活動について教えてください。

Lumiereは、4人で始めた団体ですが、他のメンバーがお休み中なので、今後はメンバーを増やして行きたいです。

私はこれから大学に進学しますが、医療系のことを学びたいと思っていますし、大学生になっても、活動は続けます。私の活動を通じて、皆さんが子宮頸がんを「自分ごとと捉える」ための“きっかけ”になりたい。

そして、そのきっかけから、行動してもらえることを願っています。

高校生とは思えない完ぺきなお話の後、この日が偶然にも「誕生日」だと話してくれた遠藤さんの笑顔は、可愛らしい18才の女の子そのもので、若い人が持つパワーとエネルギーの凄さに感動しました。

やっと受験も終わり、これから団体としての活動も強化していくそうなので、今後がとても楽しみですね。活動に参加したい人!活動をサポートしてくれる企業の方!ぜひ応援よろしくお願いします。

「Lumiere」へのお問い合わせ

lumiere.press.20@gmail.com
Twitter: @Lumiere_press 

 

取材を終えて記念撮影(藤森、遠藤さん、T-PEC大井さん)

※本インタビューは2021年に実施したものです。

 ■取材・文/藤森香衣
モデル活動、NPO法人 C-ribbonsを設立、代表理事を務める。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトで企画・取材・執筆を担当
■取材・編集/大井美深
ティーペック株式会社の広報担当。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトの情報サイトを運用