<先人から学ぶ!からだのこと> 自分の社会的価値を考える×パラレルキャリア

2022年05月12日

こんにちは。先人から学ぶ!シリーズのナビゲーター・藤森香衣です。

コロナ禍で個々の働き方が大きく変わる中、「将来」や「これからの年収」についてなど、漠然とでも考えた人は多いと思います。また、会社から副業(パラレルキャリア)を良しとされていても、何をどうしたらいいのか分からない…

悩みばかりが深くなっているのではないでしょうか。

そんな皆さんのために今回は、大学生の時に起業をし、大手企業に就職しながら自分の会社も継続している、正能茉優さんにお話を伺いました。

―― 「働き方」が大きく変わってきていて、雇用に関して不安を抱く人が増えていますよね。
ただ、副業についても、まだやっている人が少なく、自分にそれが必要なのかも分からない人が多いようです

これまで、日本社会では、一つの会社で定年まで勤め上げる終身雇用が当たり前でした。年功序列で、お給料も立場も上がっていく、いわゆる一般的な会社員の働き方です。

しかし、今は働き方にも幅が出てきています。

例えば、この数年でよく耳にするようになった「パラレルキャリア」。

パラレルキャリアと聞くと、働くことにアグレッシブな人の働き方と思われがちですが、実は【保守的な人】にも大切な考え方なんです。

パラレルキャリアを提唱したドラッカー(経済学者・経営思想家)曰く、働く個人の寿命が長くなり、会社組織の寿命が短くなった今、個人の寿命よりも、組織の寿命のほうが長いということが難しい。

だからこそ、1社目にいるうちに、次の選択肢を仕込んでおかないとマズくない?…という考え方が、実はパラレルキャリアなんです。

そう考えると、むしろ安定を求める慎重派の人こそ、特定の仕事をしながら他の仕事にも取り組む「パラレルキャリア」という働き方が向いているのかもしれませんね。

―― 副業だけでなく、転職を考える上でも、変化はありますか?

転職という意味で考えると、「処遇」のあり方は、この数年で大きく変わるところかもしれません。

今までは、「うちの会社の場合、40才で部長だったら、年収は〇〇〇万ぐらいだよね」と、その会社の“当たり前”で処遇・給与が決まっていました。

しかし、雇用が流動的になり、複数の組織で働く人も増えた今、社内だけではなく、社会でその働く個人の処遇を決める必要が出てきたのではと考えています。

例えば、同じスキルとキャリアが活かせる仕事で、他の企業の方が年収が高かったら、当然、転職を考えてしまいますよね。

だからこそ、働く個人は「自分の社会的な価値をどう上げていくのか」を意識せざるを得ないと思うし、会社や人事も、「そのジョブにおける、社会的にあるべき処遇」を把握せざるを得ない。

今勤めている「パーソルキャリア」で、私が取り組もうとしているのは、そんな、雇用が流動化する世の中において、処遇について、よりフェアで、オープンな市場形成をしていくことです。

パーソルキャリアには、これまでのビジネスの中で貯めてきた膨大なデータがあります。それを活かし、業種・職種・グレードごとの報酬水準データを企業人事に提供するのが「サラリーズ」というサービス。


このサービスの面白いところは、働く個人の経験やスキルが社会でどのように評価されるかも、可視化できるところです。

例えば、ある業種・職種・グレードにおいて、どのような経験やスキルが、処遇のアップにつながるかが分かります。

処遇を上げる経験やスキルを明らかにすることで、企業人事が人材育成や配置転換を検討する時にも使えるだろうし、働く個人も自分のキャリアアップの道筋を知ることができます。

データから、同じ経験・スキルを持った人が、より高い年収で処遇される業種・職種を知ることもできます。データを活用しながら、フェアでオープンな市場形成はもちろん、日本中で適材適所を生み出せるきっかけをつくっていきたいです。

―― テレビのコメンテーターやセミナーの講師としても活躍していますよね。他のお仕事や活動についても教えてください


私が代表を務める(株)ハピキラFACTORYは、大学1年生の時に、長野県小布施町での「まちづくり」のインターンに参加したのがきっかけで、設立した会社です。地域の魅力的な商材を女性目線でプロデュースし、販路の開拓までお手伝いしています。

その経験からテレビ番組やセミナーにお声がけいただいたり、あとは、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」の有識者委員をさせていただいたりもしています。


 ―― Instagramには岸田総理とのお写真もありましたね

岸田内閣の「デジタル田園都市国家構想会議」の委員も、一番下っ端として参加させてもらっています。Z世代・ミレニアル世代の声を伝えていくのが、今の私の役割ですね。

あの総理とのお写真は、官邸の中でも天井が高くて私が好きなお部屋があるのですが、「やっぱり、天井が高くて好きだな」と自撮りしていた時に、岸田さんが一緒に撮ってくれました。私のような若輩者の意見もまっすぐ聞いてくださる方です。


 「デジタル田園都市国家構想」は、都市部の持つ「精神的な豊かさ」と、田園部の持つ「精神的な豊かさ」をデジタルの力で両立し、令和のこれからの暮らしを考えていく…というもの。

この会議に参加する委員は、女性も多く、年齢も様々。

私のような若者にも、一委員として総理や大臣たちと国の今後を話す機会をいただき、ありがたいなという気持ちと、国もどうにか若者の意見を取り入れようとしてくれているんだなという変化を感じました。

―― キャリアと「ご自身のからだ、健康について」教えて下さい

年を重ねたせいか、この数年、親しい友人・知人の中にも病気をする人がちらほらいます。SNSで繋がっているせいか、いろんな人のプライベートな部分が見えるので、心配になることも多いですね。

私はというと、「心身の健康」あっての「社会での活躍」と思っているので、健康には気を付けています。

そう思うようになったのは、もともと体は丈夫な方だった私が、社会人2年目のある時、体調が急に悪くなり、1週間ほど会社を休んだことがきっかけです。当時は仕事に夢中で、力の限り働いてしまっていたのですが、初めての自分の体の状態に驚き、そこから体のことを考えるようになりました。

今は毎年、会社の健康診断はもちろん、かかりつけのレディースクリニックで検診も受けています。

―― 婦人科健診や婦人科に行くことだけでもストレスを感じる女性は多いのですが…

私はすごく心配性なので、自分の体を守る方法の一つと思ったら、嫌な気持ちや恥ずかしい気持ちはありませんね。

かかりつけのお医者さんが決まっているのも、ストレスが少ない大切な要因かもしれません。

定期的に検診を受けたり、必要な人は保険に入ったり、今できる備えを積極的にしたいなと思います。

―― 生き方を考える上で、若い人たちにおすすめしたいことは?

私のおすすめは、「人生配分表(ポートフォリオ)」をつくることです。

人生配分表とは、自分の人生の使い方のポートフォリオなのですが、自分の時間を、すなわち自分の人生をどう使っているかを、数字で表して、表にします。仕事に何%、家族に何%、睡眠に何%…という具合です。

1日24時間の過ごし方、1週間・1ヶ月・1年の積み重ねが、人生の過ごし方になるのは間違いない。

だからこそ、ちょっと俯瞰して、どんなバランスで何を大切にしたいのか、決めておくと、「どんな人生を歩みたいのか」「それを実現するにはどんな時間の使い方をするのがいいか」が見えやすくなるかもしれません。




―― 大切にしている言葉があれば教えて下さい

私の人生のキーワードは「誇り高き、小ささ」です。

きっかけはサンフランシスコへ行った時、Sightglass coffee(サイトグラスコーヒー)という、数店舗しかないけれど、おしゃれで感度の高い人たちが集まるコーヒーショップを知ったこと。

ここがとても素敵で、手触り感があるビジネスをしているのに、一定規模感もあって、「自分の好きな“サイズ感”」だなと感じました。

スケールすること、インパクトがあることも素晴らしいけれど、私は、自分が心地よく感じるサイズ感を知ることこそが、人生において「幸せになる基本」だと思っています。

あ、ちなみに私の好きな「小ささ」は、「ちっぽけ」ではない小ささです。

社会を動かす、前向きな、でも手触り感のある小ささがいいなと。

プロフィール

正能茉優(しょうのう まゆ)
ハピキラFACTORY代表取締役
パーソルキャリア 「サラリーズ」事業責任者
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教

1991年東京生まれ。慶應義塾大学在学中に、ハピキラFACTORYとしての活動を開始。卒業後は、博報堂、ソニーを経て現職。会社員として勤めるパーソルキャリアでは、170万件以上のキャリアデータから報酬レンジを企業向けに提供し、“フェアな処遇”の実現を目指す「Salaries.jp(サラリーズ)」の事業責任者を担っている。内閣官房「デジタル田園都市国家構想会議」、「まち・ひと・しごと創生会議」の有識者委員など。

■取材・文/藤森香衣
モデル活動、NPO法人 C-ribbonsを設立、代表理事を務める。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトで企画・取材・執筆を担当

■取材・編集/大井美深
ティーペック株式会社の広報担当。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトの情報サイトを運用