ヒトパピローマウイルス(HPV)とは?
人体のいろいろな部位の皮膚・粘膜に取りつき、イボのような盛り上がりを作る性質があるウイルスです。ヒトパピローマウイルス(HPV)そのものは決して珍しいものではなく、実は多くの人が感染したことがあると言われています。
ただ、HPVに感染しただけでは病気にはなりません。HPVに感染した細胞の一部が、腫瘍化(がん化)するのです。

HPVの症状とは?子宮頸がんとの関係
HPVにも微妙な違いがあり、細かく分けると100以上の型があります。型によって、どこの部位にどのようなイボを作るかが異なります。
例えば手足・顔などにイボを作る型のHPVもあれば、陰部にイボを作る場合もあります。のど、肛門、男性の性器などのがんの原因になる場合もあります。

子宮頸部とは子宮が膣と接している部分で、子宮の中ではもっとも体の外に近い部分です。子宮頸部の粘膜にHPVが取り付き、粘膜細胞を変化させ、統制の取れない異常な増え方をするおかしな細胞になってしまうことで、子宮頸がんができるとされています(子宮頸がんのすべてが、HPVが原因で起こるわけではありません)。
HPVの検査・診断はどこで受けられる?

子宮頸がんの検査・検診は、産婦人科や健診センターなどで受けることができます。
基本的な検査の流れとしては、まず産婦人科などで子宮頸部の細胞を器具でこすり取って顕微鏡で確認。その際に異常な細胞がありそうだと判断された場合に再診・再検査となります。
再検査では子宮頸部の細胞を詳しく分析し、HPVがいるかどうか、いるとすればどの型なのかということを調べます。
詳しい分析を行わない基本的な子宮頸がん検診は、自治体からの助成があるため、自己負担額は無料から1000円台程度で受けることができます。2年に1回、ハガキなどで検診時期が知らされることもあります。
すでに検診で細胞異常の可能性が指摘されていた場合、HPV検査は健康保険適用になり、検査料金は健康保険3割負担の場合には1000円から7000円程度になります(どの程度くわしく調べるかによって費用が異なります。このほかに診察料金などがかかりますので費用の詳細は医療機関にお問い合わせください)。
細胞の異常が確認できなかったり、まだ分かっていなかったりした段階でHPVの検査を受けようとすると、健康保険が適用されず自費になります。
検診のオプション料金として検査機関ごとに価格が設定されていますが、どの程度詳しく調べるかによっても金額が変わります。おおよそ3000円台から2万円程度までの場合が多いようです。
検査キットを使うHPVの自己採取
医療機関や健診施設での検査では、内診台というベッドの上に横になって、医師が膣の中に細い器具を入れて細胞を採取します。
それに対し、自分でスポンジ状などの検査器具を膣に入れて擦り取った細胞を郵送して検査を行うという方法もあります。HPVセルフチェック、自己採取HPV検査などとも呼ばれています。検査キットは、一部の医療機関やドラッグストア、通販などで購入できます。

■HPV自己採取の正確性や課題

自己採取によるHPV検査では、HPVがいるかどうかが分かるだけで、子宮頸がんを発症しているかどうかは正確には分かりません。また、医療機関での検査では、医師が子宮頸部の細胞を擦り取るので正確性も高く、見た目で疑わしいと感じる部位があれば、その部位を調べるなどのように柔軟な対応ができます。
一方、自己採取の場合は自分自身で行うため、うまく検査できない場合もあります。また、結果は郵送やインターネット上で見ることになり、結果を自分で解釈する必要もあります。費用はサービスごとに異なりますが、健康保険は適用されません。
HPV自己採取については、適切に行われれば子宮頸がんを引き起こす可能性があるHPVを医師の診察と同程度の精度で検出することができるという声もあります。
内診台で医師に診察を受けることが恥ずかしい、忙しくて受診しづらい、新型コロナウイルスの感染リスクを考えて外出を控えたい、といった方にとっては取り組みやすく、自分の体に関心を持つきっかけにはなるかもしれません。
ただ、細胞の採取がうまくいかなかったことが理由で陰性の判定が出た際などに、その結果に安心してしまい早期発見のチャンスを逃してしまう可能性も否定できません。医療機関や健診センターで医師と相談しながら活用していくといいでしょう。
HPV感染の治療と予防法
HPVは、感染しても粘膜細胞の入れ替わりや体の免疫力の作用などによって体外に排出され、検出されなくなることもあると言われています。HPVが感染した場合の一部が、何年もかけて細胞に影響を与え、がんにつながっていくとされています。

HPV自体を「治療する」ということはせず、がんになっていないかどうかを定期的な診察・検査によって見守っていくということになります。
なお、HPV感染や感染後のがん化を予防する方法として、
- 性行為時にコンドームを使用する(ただしコンドーム使用では完全な予防はできないとされている)
- HPVワクチンを接種する
- 子宮頸がん検診で初期段階の病変を発見できる可能性を高めて早期治療につなげる
といったことが挙げられています。
ライフスタイルに合わせた子宮頸がん対策を
日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約2800人の方が命を失っておられます。女性・男性共に、子宮頸がんやHPVについて知識を深めるとともに、ご自身のライフスタイルに合わせた子宮頸がん対策について考えていきましょう。
[参考]
・公益社団法人日本産婦人科学会「子宮頸がん」
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10
・国立がん研究センター「子宮頸がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html
・厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
・日本医師会「子宮頸がんとは?」
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/cervix/what/
子宮頸がん検診、子宮頸がんワクチン…。名前はよく聞くけど、一体どんな病気なの?
女性が知っておきたい子宮頸がんについて医師にお話を聞きました。
子宮頸がんとはどんな病気ですか?

まずは子宮の働きや構造について簡単に説明します。
子宮は、胎児を育てるために必要な臓器です。女性の下腹部に位置し、膣の奥に存在しています。子宮本体の部分を子宮体部と呼び、膣に近い部分を子宮頸部と呼びます。
子宮がんには、子宮体部に起こる子宮体がんと、子宮頸部に起こる子宮頸がんがあります。

子宮頸がんは、子宮頸部の細胞が変化して、無秩序に増えていくがん細胞になることで発症します。
悪化すると、不正出血(月経以外の時期に膣から血が出る)やおりものの増加、腹痛などの症状が起こることもありますが、がんの前段階や初期の状態では無症状のこともあります。
最近子宮頸がんの名前を聞くことが増えました。なぜでしょうか

近年、子宮頸がんは他のがんに比べ、50歳未満など比較的若い世代での罹患が増えており、20~30代でもかかる可能性があります。そして、実際にかかってしまうと将来の妊娠出産にも影響を与えることもあるかもしれません。
日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんを発症し、約2800人の方が命を失っておられます。

一方、日本以外の先進諸国では検診の普及、ワクチンの普及などの理由から子宮頸がんで亡くなる人は減少傾向にあるとされています。
子宮頸がんが進行すれば、妊娠・出産が難しくなったり、命を落とす可能性もあります。患者の増加が続く中で、予防のための検診の重要性やワクチンの安全性に関する議論が盛んになりました。
[参考]
公益社団法人日本産婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
子宮頸がんの原因はなんでしょうか

子宮頸がんの多くは、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染によって起きると言われています。HPVは性行為を通して感染し、子宮頸部の細胞を変化させてがんを発症させます。
子宮頸がんを発見する検査にはどのようなものがありますか

子宮頸がんがあるかどうかを調べる検査(検診)は、産婦人科の医療機関・健康診断を専門に行う機関(健診センターなど)や、職場の健康診断や自治体での健康診断などで実施されます。

検査では、問診・視診・細胞診が行われます。
問診票などに、生理痛の有無や周期の状況といった月経の様子や妊娠歴などを記載します。それに沿って医師の問診が行われます。
その後、膣鏡を膣内に挿入し、子宮頸部の様子を医師の目で観察します(視診)。さらに膣から器具を入れて、子宮頸部の細胞を、綿棒・細かいブラシ・細いヘラのようなものなどで採取します(細胞診)。検査機関で採取した細胞を分析し、異常があるかを判定します。
子宮頸がんの検査費用って高いの?

20歳以上の女性は2年に1回の子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。
「今年は偶数年生まれの女性が検査を受けられます」といった通知ハガキやクーポンなどが自治体から送られてくることもあり、その場合は費用の一部または全額が自治体から助成されます。
助成の有無や内容についてはお住まいの自治体のサイトなどで確認することができます。
費用負担がある場合は、数百円から1000円程度を支払うことも多いです。ただし、すでに産婦人科で検査や治療を行っている場合は助成の対象外になります。
ほかに人間ドックや職場の健康診断などで検査を実施していることもあります。
子宮頸がんを防ぐにはどうしたらいいでしょうか

2年に1回程度の頻度で子宮頸がん検診を受けることが早期発見・早期治療につながると考えられます。
子宮頸がんを予防・早期治療するためには、定期的な子宮頸がん検診や子宮頸がんワクチンの接種などが選択肢として挙げられます。さまざまな情報があふれていますが、医師と相談の上で子宮頸がんを防ぐ方法を探っていきましょう。
[参考]
公益社団法人日本産婦人科学会「子宮頸がん」
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10
国立がん研究センター「子宮頸がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html
厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
日本医師会「子宮頸がんとは?」
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/cervix/what/
公益財団法人日本対がん協会「対がん協会報」
https://www.jcancer.jp/wp-content/uploads/TAIGAN-01_4c.pdf
公益財団法人未来工学研究所「子宮頸がん検診における自己採取 HPV 検査の有効性検証 」
http://www.ifeng.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/02/87e1dd92fc41d47969329a8d42d523f9.pdf